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チベットカイラス旅行記

7月6日〜7月12日

聖地カイラス 

「カイラス」
その山に憧れるものにとってその言葉の響きは特別なものに聞こえるはずだ。ヒンズー教では、カイラスにはシヴァ神が住み、カイラス自体がリンガでもある。ヒンズー的解釈でいえば、世界一大きい男性の象徴というわけだ。さらに、カイラスはチベット人なら一生に一度は巡礼に訪れたい思うチベット仏教にとっても大聖地なのである。

 写真を見るだけではカイラスのどこがいいのかよくわからない。しかし、そこに行けば何かがあるんじゃないかって直感が働く。行けば何かが変わるって気もする。カイラスが僕たちを呼んでいる気がしてならない。
僕たちは カイラスに向かった。

多くの人が何かを求めてカイラスへ向かう

カイラス準備

1、 旅行代理店に話を聞きに行く
僕たちは、ラサに着いた次の日にはスノーランドホテルの2階にあるF.I.Tトラベルエージェンシーに行った。そこで、ランドクルーザーをチャーターしてツアーを組んだときの料金と日数と内容および条件を聞いた。その時は、車1台とガイド1人、20日間のツアーで21,000元(315,000円)だった。

2、メンバー募集
ホテルの掲示板には、いろんな場所の同行者募集の張り紙が貼ってある。僕たちもカイラス行きの張り紙があることを期待したが、全然なかったので、自分たちでメンバー募集の張り紙を貼った。早速その日の夜にふたりの女の子が僕たちの部屋を訪ねてきた。しかし、彼女たちはビザの残り日数があまりないということで断念。翌日、メンバ―探しに奔走したが見つからなかった。あきらめて部屋で寝ているとスイス人男と日本人の女の子が訪ねて来た。一緒にカイラスへ行かないかとの誘いだった。果報は寝て待て、とはよく言ってものだ。メンバーがいなくて2週間探し続けた人もいるのに、3日目で決まったのはとてもラッキーだった。メンバー募集の張り紙をしておいたのが、結果的にはとても有効だったわけだ。

3、パーミット
パーミットは、すべて旅行代理店がとってくれる。ビザの有効期限が足りない場合でも、ツアーが終わる頃までの延長なら旅行代理店が100元(1500円)でやってくれる。パーミットが出るまでなんだかんだで1週間程かかった。

4、費用
ツアーの費用は3800元(57000円)。ただし、これは13人パーティと多人数だったため可能な料金。人が少なければもう少しかかるはず。

費用総額(7月6日〜7月25日) 全て2人分 費用(元) 円換算
朝食 71元 1,065円
昼食 198元 2,970円
夜食 311元 4,665円
その他飲食 88元 1,320円
ラサで買った食べ物 194元 2,910円
ラサで買った水 45元 675円
宿 1,210元 18,150円
入場料 824元 12,360円
チップ 200元 3,000円
ツアー代(車チャーター代+ガイド代) 7,600元 114,000円
合計 10,741元 161,115円
入場料内訳  金額は全て2人分 費用(元) 円換算
カイラス入域料 100 1,500円
カイラスコルラ(巡礼)料 100元 1,500円
トリンゴンパ 160元 2,400円
グゲ遺跡 210元 3,150円
ティルタプリ 20元 300円
グラスランド入場料 50元 750円
エベレストエリア入場料 130元 1,950円
ギャンツェ城 50元 750円
ギャンツェ城前の公園 4元 60円
合計 824元 12,360円

5、持ち物
持ち物は以下のとおり。ほとんどのものは途中で売っているが、高い。カイラスコルラの時は、カップラーメンとクッキーくらいしか食べるものはないので、それらは必需品。

カイラスへ持っていったもの
ヘッドランプ カメラ 電池 スプーン・フォークセット
日焼け止め サングラス タオル 洗剤・洗濯ばさみ・ヒモ
シャンプー 歯磨きセット 石鹸 長袖Tシャツ2枚
マグカップ フリース 帽子 Tシャツ3枚
ニット帽 手袋 トレーナー パンツ3枚
マスク サンダル タイツ 靴下4足
花札 文庫本1冊 ジャケット(防寒兼雨具)
ろうそく1本 トイレ紙4ロール シュラフ(3シーズン)
貴重品類 日記帳 電卓
持っていった食べ物
チョコレート6袋 カップヌードル10個 あめ1袋 卵(真空パック)10個
ティーパック 水1.5L×14本 ジャム1ビン ココア(→不要だった)
せんべい3袋 いわしの缶詰1個 クッキー10袋 砂糖(→不要だった)

1日目 カイラスへ出発 7月6日

■ラサ9:00→ラツェ20:00

いよいよカイラスへ向けて出発。ここ一週間くらいずっとお腹の調子が悪い。これから20日間病院も薬もないところへ行くのは少し不安。しかも、ずっと車に乗りっぱなし。カイラスコルラ(カイラスの周りを歩いて周って巡礼すること)までに治って欲しいものだ。ラツェまで10時間以上かかった。ここは、カトマンズからラサに来るとき一度来たことがある町。夕方(日没は9時ごろ)見た虹がきれいだった。

チベットの大地にかかる大きな虹

2日目 ラツェ〜サガ 7月7日

■ラツェ8:30→サガ19:00

 チベットの風景は、だいたいパターンが決まっている。ひろーい草原が続き、そして、峠を越える。はじめのうちはこのひろーい大地に感動したが、ずーっと同じ景色だとやはり飽きてくるもんだ。それでもこのひろーい景色をずっと見ていると心の空間が大きくなったような気がする
 今日は、午後からまたお腹の調子が悪くなった。しかも、なぜか脈拍が高い。1分間に120もある。サガは、標高が高いのか?
 ※後で知ったことだが、サガは標高4800mあるのでラサより1000m以上標高差がある。

広い草原が続く。広すぎて距離感はまったくつかめない
サガの町。おいしい中華のお店があるが、僕だけ食べれなかった

3日目 サガ〜パルヤン 7月8日

■サガ10:30→パルヤン19:30

 「チベットの大平原をかける旅
 こんな旅行会社のありふれた広告コピーを見ただけでも僕は気持ちが高揚したものだ。チベットの大平原・・・なんてロマンがあふれる響きだろうと思った。現実にチベットの大平原をかけると、まあ広い広い。寝ても起きても大平原。やることがないので、途中からイントロクイズをやりはじめる。アカペラでイントロを歌い、それを誰かがあてる。ネタが尽きるまで歌っても、大平原は続く。
 昼ごはんを食べたトンバという集落から道がさらに悪くなる。普通の乗用車ではきつい道だ。峠を越えると景色が変わった。砂丘が続くその向こうにヒマラヤが連なっている。太陽の光が反射してキラキラとかがやく砂丘がつづく。そんな景色に見とれてしまう。その砂丘たちを通り過ぎ、大草原の中にあるパルヤンという町に着いた。

砂丘の上でジャンプ!その向こうにさらに砂丘は続く
パルヤンの近くの風景。大草原と羊とヒマラヤ。素晴らしい眺め

4日目 パルヤン〜ホルチェ 7月9日

■バルヤン8:30→ホルチェ18:30

お腹の調子が悪く夜中トイレにいった。天井のないトイレだったので、上を見上げる。すると満天の星空。天の川もはっきり見える。そこに流れ星がキラリ。下痢のことも忘れてしばらくそのまま眺めていた。
悪路をランドクルーザーはひた走る。このあたりは、村なんてものもない。遊牧民のテント、モンゴルのパオみたいなやつ。そこがティーショップ兼レストラン。もちろんトイレなんてものもない。何にもないところ。人もヤギの姿も少なくなってくる。夕方近く、ようやくカイラスの姿が見えた。まだまだ遠い。しかし、いよいよ明日からコルラだ。

ここがティーショップ。ちょっと一息
茶館の看板。その下にはヤクの頭蓋骨が・・・
ヨーグルトをシェイクしている。これがうまい
マユム峠。5000mを越えているが。もうすぐカイラスだ

5日目 カイラスコルラ初日 7月10日

■ホルチュ7:00→タルチェン8:30(ランドクルーザー)
  タルチェン9:20→ディラプクゴンパ11:30(コルラ:徒歩)

「なんだ、すごいなだらかな登りじゃん。楽チン楽チン」
僕たちは愚かだった。タルチェンの標高が4500m、今日泊まるところの標高が5200m。標高差700m。そして、どんなに高度に慣れていても、山を登るときはその影響がでるもんだ。後半泣きそうなくらい大変な思いをするのだが、歩きはじめはハイキング気分でスキップするように歌をうたいながら歩いていた。

コルラスタート。なだらかな登り道。ルンルン足どり軽やか

 少し歩くとカイラスが見えはじめた。そのピラミッド状の姿、てっぺんにかぶる雪、表面には断層によるシマ模様、どれも完璧な美しさだ。歩き続けると少しずつカイラスの見える角度も変わってくる。南面から西面へ。そして、カイラスはまた山の陰に隠れてしまった。

歩きはじめて2時間、カイラスが近づいてきた
河原でお昼ご飯。このあたりまでは元気だった
マーモット。プレーリードッグに似ている。体調60cmくらい

 歩き続けて7時間。はじめの元気はどこへやら。足が痛い。フルマラソンを走った後のようだ。血がちゃんとめぐっていないような感じだ。高度の影響なのか、久しぶりに足を使ったからなのか。ようやく、今日の宿泊地についたときには、疲れて何もする気が起きないほど、立ち上がるのさえおっくうなほど疲れきっていた。
 しかし、そこにはカイラスの北面が待っていた。目の前に大きくどっしりと構えていた。それまで見ていたカイラスよりもっともっとせまってきていて、でも親しみのある顔をしていた。僕にとっては、それは聖なる山というより、なんかひさしぶりに会った親友のように思えた。なぜそう思えたのかはよくわからない。うれしい気持ちと親愛なる気持ちが混じったハッピーな気持ちが僕のこころのなかに満たされたそんな気分だった。僕はこのときたしかに大切な何かをつかんだ

カイラスの北面に祈るチベットの民

6日目 カイラスコルラ2日目 7月11日

■ディラプクゴンパ8:15→ドルマ峠12:00→ズトゥプクゴンパ17:30(コルラ:徒歩)

 カイラスをぐるりと一周するときの最大の難所ドルマ峠。標高5600m、酸素は地上の半分。この峠に着くまでに人は死に、下るときに新しい生をもって生まれ変わると言われている。
 この峠を越えた。
 ほとんど変わらない自分だけど、多分新しい自分にちがいない。

五体投地してコルラする巡礼者。2,3週間かかるらしい
ドルマ峠ではためくタルチョ。多くの人の願いが風に揺れる
ドルマ峠の下にある湖
雪がまだ残っているところを横切る
ドルマ峠を越えると急な下りが続く
のどかな風景。標高5000mとは思えない

7日目 カイラスコルラ3日目 7月12日

■ズトゥプクゴンパ8:30→タルチェン12:00(コルラ:徒歩)
  タルチェン13:30→ムンツェル15:30(ランドクルーザー)

 長くゆるやかなアップダウンの道を歩き続けた。そしてコルラが終わった。カイラスを1周52キロ、一生忘れることのできない3日間だった。祈りの山カイラス、そこでは多くのチベット人巡礼者に会った。みな満足気な表情をしていた。そりゃそうだろう、みな夢がかなってカイラスをコルラしているわけだから。彼らの幸せな笑みは、僕らを幸せにしてくれた。ここは、特別な場所にちがいなかった。

僕たちは、ムンツェルの宿で一週間ぶりに氷水のように冷たい井戸水で頭を洗った。(昭浩)

アップダウンが多くて意外とつらかった最終日
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