9月24日〜10月1日
今日の朝日はオレンジ色。6時半ごろ真東から太陽が昇る。昨日マナウスを出たバスはまだボアビスタに着かない。ポリスチェックで止まっているバスあり。私たちは、昨夜12時ごろバスの中で、バチッと電気をつけられて、身分証明書と手荷物を片っ端からチェックされたので、今回は大丈夫だった。
8時ごろ、ボアビスタに到着。すぐにベネズエラ領事館へ行った。ターミナルに預けることができず、荷物を持ったままで行ったので、暑いし、荷物重いし、結構つらかった。しかもいるなかいらないのかよく分からないツーリストカードのために私たちはかなり待たされた。(注:ツーリストカードはなくてもいいみたい)
サンタエレナ行きのバスにはアマゾン河の船旅からボアビスタ行きのバスまでずーっと一緒だったイギリス人のすきっぱ男とドイツ人のでぶっちょ男、それにアフリカのシエラレオネ出身のジョセフも一緒だった。ただ、私たち二人とも彼らとはどうも気が合わないというか、好きになれなかったので、彼らとの会話はほとんどない。
特にジョセフはトラブルメーカーで、何かと人に迷惑を掛け、関わるとろくなことがないので、一緒に国境を越えるのだけは避けたい。彼はアマゾン河の船旅の時も、シエラレオネのパスポートではなく、エクアドルの身分証明書みたいなのを見せていたのだ。
しかし、彼はまったくスペイン語が話せず、もちろんポルトガル語も話せない。ブラジルの人は英語も分からず、バカだ。とまで言っていた。そんなことを言ってる彼の方がよっぽどバカだと、私は思うけれど。とにかく彼はあやしい。何かと面倒を巻き起こす存在なのだ。
あきちゃんはと言えば、最初はジョセフと仲良くしていたが、アマゾンの船旅の時に買った瓶詰めの筍の水煮みたいなのをジョセフに1つあげたのに捨てられたことを根に持っている。自分からくれと言ったくせに、「おいしくない」と言って人からもらったものを捨てるなんて失礼な話だ。
バスはブラジル側の国境までしか行かなかったので、バスを降りると、私たちが両替をしている間にジョセフはいなくなった。やれやれ。内心ホッとした。どんなパスポートを出してくるのか、ちょっと興味はあったけれど。
私たちは、すきっぱ男とでぶっちょ男と4人で国境を越えた。
しかしベネズエラ側の国境のイミグレがない。結構歩いたのに、結局タクシーでサンタエレナにあるイミグレまで行くことになった。荷物もあるし、このでかい男たちと4人乗りなんて絶対ムリ!!と思ったのに、ツードアのタクシーに何とか、というか無理やりに乗って、仲の悪い4人が一緒にイミグレへと向かった。さらにバスターミナルまでも一緒にタクシーに乗ったのだ。いい加減別々に行きたいけれど、行き先が一緒だし、タクシーはシェアした方が安いから仕方なく一緒に行っているという感じ。
すきっぱ男はわりと調子よくぺらぺらしゃべるが、でぶっちょ男は必要なこと以外しゃべらない。私たちも必要なこと以外、というか全然必要ないので、全くしゃべらない。
シウダーボリバール行きのバスは自由席で、すきっぱ男とでぶっちょ男は私たちの後ろに座っていたけれど、その後一言も言葉を交わすことがなかった。
ちなみにジョセフはバスターミナルで会ったけど、6時半のバスでカラカスへ向かった。もうこれで今度こそ、彼と会うことはないだろう。謎はたくさん残ったけれど、彼とはもう関わりたくない。(映子)
デブとすきっぱ男には別れも言わず僕らはとっととタクシーで宿に向かった。シャワーを浴びて、洗濯して、早速旅行代理店へ。さっさと明日からのエンジェルフォールのツアーを決めて、寝たいのだ。
僕らは、サルバドールからバスで2連泊、そして船で6泊、さらに続けて夜行バスに2日連続で乗ったので、10連泊、移動のなかで寝たことになる。いい加減、ベッドで寝たいよ。
旅行代理店に行った後、何時間かベッドで仮眠したのち、僕らはオリノコ河沿いのレストランに向かった。そして歩きながらベネズエラってどうよ?って話になった。
というのは、ベネズエラ人は愛想が悪い、とかベネズエラのポリスは腐っていて旅行者に難くせつけてツーリストから金を巻き上げる、そんなウワサが南米の旅行者の間ではびこっているからだ。そのためベネズエラを避ける旅行者が多いのも事実。
でも昨日の入国から今までほんのわずかしかベネズエラにいない僕らの意見はこうだ。
ベネズエラ人は特別愛想が悪いわけではない。ごくごく普通である。ごく普通といってもその基準がよくわからないんだけど、例えば黒人のようなファンキーな明るさや軽いノリなんはなく、かといって全く無愛想なわけでもない。無愛想な人もいれば、愛想のいい人もいる、といったところ。不良ポリスについては国境などでちょっと警戒したが、特別何もなかったし、バスに乗っているとき検問で止まり、パスポートチェックにあったが、そのときも非常に丁寧な対応だった。バスに乗り込む前に警察による荷物チェックがあったのだが、そのときのポリスも腰が低かった。どうも良くないウワサというのは誇張されて広がることが多いみたいだ。実際その国にいってみなきゃわからないってことだ。
僕らは、オリノコ河でとれたらしき魚を食べ、明日からのエンジェルフォールのツアーも申し込み、ひさしぶりにメールチェックも終え、最後にオリノコ河の夕日を見に行った。
オリノコ河は茶色の流れ、お世辞にもきれいとはいえない。川幅は100mくらいあるので大河ではあると思う。エンヤはどうしてオリノコ・フローという曲を書いたのかなあ、そう思って、オリノコ・フローを口ずさむ。
「何それ?」
「エンヤのオリノコ・フロー」
「お経かと思った」
相変わらず映子は毒舌である。ベネズエラの夕日はオリノコ河の上にあるもやもやとした雲の中に沈んでいった。(昭浩)
7時に起きた。昨夜は、 久しぶりのベッドでよく眠れるかなと思いきや、いきなり金縛り。その上、映子のわがままで冷房をつけたまま寝たので、体が冷えてしまった。なんとなく疲れのとれないままの出発となった。
シウダーボリバールから飛行機でしか行けないカナイマという町まで行き、そこからさらにボートで2日川を遡り、そこでようやくエンジェルフォールを見ることができる。エンジェルフォールは、ベネズエラ最大の観光地でありながら、秘境中の秘境のニュアンスを持った滝なのである。
僕らはカナイマのキャンプサイトで他のツアーメンバーの到着を待ち、午後3時ようやく出発である。メンバーは総勢16人。スペインのバスク出身の団体8人、スペインマドリッド出身のカップル、カナダ出身カップル・・・そしてよりによって、あのデブとすきっぱ男も一緒だった。
特にデブと僕らは今でも反目しあっていて、セスナまで同じだったのに口もまったくきかない。しかし、お互い無視しあっているので、迷惑をかけあうこともないし、無視しあっているぶん、気分を害する機会も少ない。気を使うことも逆にないので、ある意味中途半端に話をするイヤな奴よりはよっぽどマシな存在ではある。向こうもそう思っているだろう。無視しあうことによってお互いが心地よく過ごせる―僕たちとデブはお互いにとって非常に適切な人間関係を構築しているともいえる。
カナイマというところは、エンジェルフォールに行く際のベースとなる町なのであるが、ここ自体もなかなか見所のあるところだ。
真ん中に湖があり、そこには滝が4つ、5つ横に並び、すさまじい水量を湖に落とし、轟きとともに水煙を上げている。迫力ある景色だ。しかし、エンジェルフォールが後ろに控えているため、いわば前座のような扱いである。
ツアーはまずこの滝をまわる。滝のうちのひとつエルサポの滝というところには、その滝の裏側に入れる。幅100mくらいあるミニイグアスの滝といった風情のエルサポの滝の裏側は水のカーテンに包まれた回廊で、そこは轟音としぶきがあたりを包む不思議な空間だった。歩いていてびしょぬれになるのだけど、なんか思わず笑っちゃう楽しい滝裏だった。
ボートに再び乗り、山の方へと進む。山というのはエンジェルフォールのあるテーブルマウンテンのことだ。テーブルマウンテンといって思い出すのがケープタウン。ケープタウンのテーブルマウンテンの少し大きいものをイメージしていたが、上流へと進むにつれ、それが認識の大きな間違いだったことに気がつく。
さすがギアナ高地、それはテーブルマウンテンと呼べるようなものではなく、大きな大きな岩の壁。巨大なオーロラのようなくねくねとしたカーテンが岩壁となって地面に突き刺さっている。そんなのが、僕の右手約180度囲むように立っている。熱帯雨林のジャングルの上に岩の巨大カーテンが空間をさえぎっているのである。絶景である。
それにしても寒いなあ。滝で全身びしょぬれになって、ボートに乗って、風にあたって体が冷やされる。エンジェルフォールへの道は長く厳しい。(昭浩)
朝からゲリだ。実は一昨日からゲリしているのだが、そのうち治るだろうとあまりケアしていなかった。いよいよエンジェルフォールという今日なのに朝からゲリ、しかも水ゲリとは。
昨晩ロン(ラム酒)をストレートでガバガバ飲んだのがいけなかったみたいだ。映子は僕が水ゲリだといっても全く心配する様子はなし。瞳の奥に笑みさえ浮かべているようにも見える。それでも僕は懲りずに朝ごはんをしっかり食べて、出発した。
ボートに乗り込み、川の上流へと遡っていく。上流に行くに従い、瀬も増えて、ラフティングでもできそうな川の様相だ。ボートのおっちゃんは起用にボートを扱いどんどん上流へと上っていく。
途中後続のボートを待つためプールと呼ばれる流れのない淀みでボートは停まった。そこにある大きな岩に登って、その淀みのなかに飛び込むということを、デブやすきっぱ、カナダ人カップルやガイドはやっていたが、ジャンプはいいから早くエンジェルフォールを見せろといいたい気分である。ジャンプなんてどうでもいい。そんなことをするためにこんな山奥にきたのではない。
しばらくしてから再び出発。ありえないほど大きな岩の壁が右手と左手にちょうど僕らをはさみこむように続いている。しかし、まだ朝からの霧がまだかかっているのが気がかりだ。
蛇行する川を上っていき、カーブを曲がると、正面に見える大きな岩壁のところに水煙が見えた。エンジェルフォールである。
おおっすげぇ!
でもその上部はまだ白いガスの中。あと、もうちょっとで完璧なのに・・・。
僕たちは舟を降り、展望台と呼ばれる丘のうえに向かった。1時間ほど上ると、目の前が急に開け、そこにはエンジェルフォールがあった。先ほどまであった霧もなくなり、青空さえ見える。思いっきり見上げた岩壁の上から水が噴出し、白く美しい筋を茶色の岩壁の上に描いて落ちる。最後のほうはその筋はあいまいなモヤのようになっている。滝の下には滝つぼはなくスモークがたちこめているといった状態。あまりの高さに流れ落ちる水は最終的に霧雨へと変わってしまうためだ。
首が痛くなるほど見上げる。高くて大きい一枚の岩の壁。そこにある一筋の白い滝。素晴らしいとしかいいようがない。じっと見ていると、その滝は空に水のもれる穴があいていて、天から水がもれ落ちているようにみえる。
僕たちは展望台を後に、さらに滝に近づいていった。
エンジェルフォールには滝つぼはないが、滝の直下で霧雨となって降った滝の水が集まり、そこにまた流れができ、そこからさらに一段下へと落ちる小さな滝をつくっている。その場所へと行った。そこからは、ほぼ真上に近い角度でエンジェルフォールが見える。真上の天から落ちる滝であった。
今回の長い旅の中で最後の観光地エンジェルフォールに僕らはとうとうやってきた。いよいよ旅も終わりに近い。(昭浩)
僕はやはり晴れ男らしい。昨晩は満月の中、そして今朝は朝陽を浴びるエンジェルフォールの姿を見ることができた。
月下の滝は黒いジャングルの上、奇怪なシルエットの岩壁に走る白い筋がぼんやりと月の光を反射していた。神秘的な光景だった。朝陽を浴びると、茶色の岩壁が橙色に輝き、そのなかを水の筋が落ちている。爽やかな威容さを見せつけていた。
僕たちは遡ってきた川を今度は下り、そしてカナイマへと戻った。
カナイマのロッジにはタケダさんという日本人がいたので、いろいろ話をした。これまでいった旅の話、カラカス情報、最近の日本のニュース、そういう話題だったと思う。タケダさんは、僕たちのHPを見たことがある、といって僕たちを驚かせた。名前が変わっているのでピンときたらしい。3年間旅をしていて、HPを見たことがある人と会うのは初めてだ。マイナーだし、字が小さくて読みにくいし、アクセスしてくる人がいるだけありがたいのに、その人と直接会っちゃうんだから、そりゃうれしくてしかたない。HPを見たといって会ったこともない人からメールもらっただけで、うれしくて小躍りしたくなるくらいなのに、HP見た人に会えるなんて運がよすぎる。そのタケダさんは、日本のスポーツ新聞を僕にくれて、午後の飛行機でシウダーボリバールへと帰っていった。
タケダさんを見送った後、僕たちがカナイマで泊まっているロッジ&旅行会社のオーナーのリカルドは言った。どうして彼がそんなことを僕に言ってきたのはいまだに謎だし、本人も何かを意識しての発言でもないようなだけに印象的な言葉だった。
「彼(タケダさんのこと)はいつもスマイルな人だ。いろんなトラブルがツアー中に遭ったけど、いつも彼はスマイルだったよ」
自分はどうだったかな?多分そんなにスマイルはなかったんじゃないだろうか。デブと反目していたこともあるし、英語で会話するときなんか、必死に聞き取ろうとするあまり眉間にシワを寄せていたかもしれない。
会話をうまく交わすことができなくても笑みは絶やさぬようにしようと思った。それがひきつった笑顔であってもできるだけ笑顔でいようと思った。変に気を使ったり無理して会話をしたりしなくていいから笑みだけは無理しても絶やさぬようにしようと、そう努力しようと思った。笑みは人の心も自分の心もやわらかくするもの、リカルドの言葉を聞いてそう思った。
(昭浩)
滝の上から昇る朝日とともに目が覚めた。今日もハンモックの中だ。ロッジといえども屋根があるだけのオープンエアースペース。でも風か気持ちいい。昨夜はこの場所からホタルの光が飛ぶのが見えたりした。カナイマもなかなかいいところだ。
さて、今日はセスナだ。
それほど強い欲求ではないが、せっかくここまで来たのだから空の上からエンジェルフォールを見てみたい。
しかし、セスナ飛行は天気がよく、希望者が4人以上、しかもパイロットの気分しだいで飛ぶといったかんじで、まったく不確定要素の多い遊覧飛行だ。そのため、空港で待つこと1時間。しかし、僕たちは運良くセスナに乗ることができた。
セスナは少しずつ高度をあげていきギアナ高地のテプイ(テーブルマウンテン)の上くらいの高さにまで達した。間近でみるテプイ、その下に広がるジャングルとその間を蛇行する川。まさにギアナ高地のイメージで広大なスケールの景色だった。テプイの上にふたつ並ぶ大きな岩の柱の間を小さなセスナは通り抜けていった。テプイの上はごつごつした石の柱がたっていたり、緑の草原が広がっていたり、そこを小川が流れていたりしていた。ここのテプイはギアナ高地のなかにあるものなかでも大きいもので、ドミニカ(小さい島のほう)くらい、すなわちひとつの国と同じくらいの面積があるという。たしかに、たくさんの人が暮らし、ひとつの大きな村や町くらいはすぐ作れそうだ。
テプイの上の川をパイロットは指さして教えてくれた。
「この川がエンジェルフォールに続いている」
川に沿ってセスナは進み、テプイの端まできて、いよいよエンジェルフォール・・・
しかしそこには雲がかかっていて良く見えなかった。残念。
セスナはテプイの奥へと進み、他にいくつかあるミニエンジェルフォール的な滝のうえを回り、ジャングルの上に大きくズドンと腰をすえているテプイの上をまわった。
最後にもう一度エンジェルフォールに向かう。
「エンジェルフォール イズ クリア!」
パイロットが叫んだ。
雲の切れ間からエンジェルフォールの姿が見えた。ほぼ真上から見下ろす世界一落差のある滝を見て、思わず「ヒュー」と嘆息をもらす。
僕はとても満足だ。満面の笑みで飛行場に戻る。もうやり残したことはない。南米ともこれでさよならできる。(昭浩)
朝6時、カラカスに着く。いつものことながら、夜行バスは疲れる。 あきちゃんは朝型なので、どんなことがあっても朝は元気だ。私が宿でくたっとしている間に、ツーリストインフォメーションと旅行代理店に行ってくれた。でもまだ収穫なし。日本に帰る安いチケットが見つからない。
昼からは私のほうが元気になった。インターネットでエアチケットを調べたり、別の旅行代理店へ行ったりした。その結果、とりあえずマイアミに行こうということになった。カラカスからマイアミ行きのチケットが安く、アメリカから日本へ飛ぶ飛行機はたくさんあるから、安いチケットもありそうだからだ。
夕方には日本人経営の旅行代理店へ今度は二人で行った。実はここが一番よかった。チケットが安く、とても親切だし、トラベラーズチェックの両替もできそう。カラカス観光は明日一日でできるだろうということで、あさってのマイアミ行きのチケットを予約した。
ちょっとあせりすぎかなという気もした。宿の上を飛行機が通り過ぎるたびに、気持ちが焦ってくるのも事実だ。早く飛ばなきゃ、早く飛びたい、と思う。(映子)
マイアミ行きの便が明日の早朝発なので、今日が実質南米最後の日だ。僕たちはこの日カラカスを観光することにした。
治安が悪いといわれているカラカスのなかでも特に危険な場所がセントロ地区である。しかし、カラカス観光でははずすことができない、南米独立の父シモンボリバールの生家がセントロ地区にある。僕らはかなり警戒をして、危険エリアのセントロへと向かった。
ところが、いってみるとそこはノーマルな一般市民が闊歩するにぎやかな普通の町。危険な香りは特別しない。露店がいっぱい出ていてにぎやか。路上のコーヒー売り、サトウキビジュース屋、手作りヨーグルトの店、しぼりたてオレンジジュース屋台、アイスクリーム屋など、誘惑が多い。
「うまそうやなー」
「あれもうまそうやなー」
お互いそんなことをいいながら歩くのは危険どころかとても楽しい。
シモンボリバールの家はそんなセントロの中心から歩いて3分くらいのところにある大きな家だった。いくつも部屋が連なり、中には礼拝堂まである。裕福な家に生まれたのは一目瞭然だ。
午前中に観光ってやつを終え、夕方に昨日予約しておいた飛行機のチケットをとりに日本人のチバさんが経営する旅行代理店へ足を運んだ。
ここはとても良心的な代理店で、飛行機チケットが他の代理店より安い上に、しかもトラベラーズチェックをヤミ両替レートで換えてくれたりもした。ベネズエラではヤミレートで両替するというのが非常に重要なのだ。公定レートが1ドル=1900ボリバーレス、ヤミレートだと1ドル=2500ボリバーレス、ってことは、ヤミレートだと25%くらいお得ということになる。おかげで、カラカス〜マイアミまで往復税金込みドル換算で220ドルしかかからなかった。国際線の往復チケットでその値段は破格といえよう。
僕たちはチバさんにつきあってもらって、ベネズエラ名物のチョコレートとロン(ラム酒)を買いに言った。ベネズエラはカカオの大産地であり、安くておいしいロンでも有名なのだ。
ベネズエラ滞在はとても短く、エンジェルフォール以外に強い印象はないんだけど、僕はけっこうこの国のことを気に入っている。また機会があればじっくり旅行してみたいなあとも思っている。カカオ分75%の濃厚チョコレートをつまみに冷凍庫で冷やしたロンをちびりちびりとやりながらベネズエラのことを振り返る―日本に帰ったらきっとそんなことをしているだろう。(昭浩)