11月5日〜11月10日
三峡下りの船は、重慶〜武漢の間を通る。
僕たちは次に張家界に行くので、アクセスのしやすい、この宜昌という街で、昨夜、途中下船した。
それから一夜明けた今日は休養日。
久しぶりのシャワー。
久しぶりのドアのあるトイレ。
この2つがあるだけで、心も落ち着く。
宜昌という街は、緑も多いきれいなところ。
揚子江沿いの公園と公園沿いの並木道が気分をさわやかにしてくれる。
ここなら住んでみてもいいかなあと思える。
その日の午後、張家界までの列車のチケットを買いに行った。
残念ながら硬臥(寝台)は1つしか取れなかった。
今晩3時に出発する列車で、初めての硬座(一番安いシートでいつも混み混み)を体験することになった。
映子は安心しているようだが、僕は少し憂鬱だった。(昭浩)
出発する30分前、駅のゲートが開いた。
僕は重いリュックを担ぎながら、自分の車両に向かってホームを走る。
多くの中国人 をごぼう抜きしたにもかかわらず、
その車両の一つしかない乗車口に大勢の人がたかっている。
中国人のおばちゃんのヒジテツにもめげず強引に乗り込んだ。
何 とか自分の席を確保して、しばらく本を読んだ後、眠りについた。
朝5:30頃だったと思う。
二人の野暮ったい男が何かを言いながら、すっかり寝ている僕の 車両に乗ってきた。
1人はギターを持っている。
僕の悪い予感はあたり、2人は歌いだした。
歌うというより叫ぶといった方がいいだろう。
「なぜ歌う?朝の5 時半に・・・」理解に苦しむ。
歌が終わってホッとして眠りにつこうと目をつぶっていると、突然頭を殴られた。
見上げると歌の男が手を出している。
どうやら 金をくれと言っているらしい。
隣に座っている中国人は、当然のようにお金を払っている。
「え、なんで???」さっぱり分からん。
結局、「何で払わなきゃい けないんだよー」と日本語で言い返し、
何度か言い合った後、男はあきらめて去っていった。
そんなこんなで、何とか無事に張家界の駅に到着し、
その日はそこからバスで 武陵源の街まで行った。(昭浩)
今日は、武陵源トレッキング。
ロープウェイで登っていくと、ニョキニョキした岩たちが次々と姿を現した。
岩というと丸い感 じがするけれど、
どちらかと言えば棒状でつららのようなものがたくさん立っている。
どうやってこんなものができたのか本当に不思議。
上の方から見渡すと本当にすごい!
自分の存在がちっぽけだと感じる。
自然の迫力の前には、兵馬俑も大雁塔も勝てない気がする。
写真でも言葉でもこの感動は表せない。
私たちは、中国人もあまり行かないようなトレッキングコースをひたすら歩いた。
けもの道のようなところ、途中で崩れているところ、崖の上から水が雨のよう に降ってくるところもあった。
石畳の上の落ち葉をかさっかさっと踏みながら、歌を歌ったり、俳句を詠んだり、とがった岩に勝手に名前をつけたりしながら歩
いた。
もう何公理(距離の単位:1公理=1km)歩いたか分からないくらい歩いて疲れたけれど、とても充実した1日だった。(映子)
黄龍洞、ここは、兵馬俑と同じく、農家の人が掘っていたら見つかったらしい。
中は、とても広くて途中で船に乗っていった。
最初、私たちは二人とも秋芳洞を思い出した。
船に乗ると今度はなんだかディズニーランドのカリブの海賊みたい。
赤とか青とか緑とかいろんな色でライトアッ
プされているところがまた人工的で、本当に自然のものなのか疑ってしまった。
すごく大きな洞窟で、初めて見つけた人はびっくりしただろうなあと想像してみ た。
武陵源もニョキニョキしてたけど、こっちは洞窟の中でニョキニョキしている。
サボテンみたいなもの、おばけみたいなもの、長くて細い塔みたいなもの、
「千と千尋の神隠し」に出てきそうなおばけみたいなもの、
いろいろあった。(映子)
世界遺産に登録されている武陵源自然風景名勝区は、広いため入り口が4つある。
今日は、7日とは違う「張家界森林公園」と いう入り口から入って、黄石寨というところに行った。
黄石寨のトレッキングコースは、石畳できちんと整備された、ニョキニョキのひとつに登って下りてくる
コースで、
天子山とは違ったよさがあった。
同じ武陵源だから天子山と同じかなあと思っていたけど、本当に一つとして同じ景色はない。
まさに、一期一会の世 界だった。(映子)
金鞭渓という渓谷を通って、武陵源に来る前から行こうと決めていた水線四門という眺めのいいところへ向かった。
道は、川沿 いでわりと平たんで歩きやすい。
本当に景色がいいところを散歩している感じで気持ちよかった。
今日はニョキニョキをずっと見上げていた。
見所ごとに看板が
きちんとあったので分かりやすかった。
「恋人とデートしている岩」
「先生と生徒の岩」
「らくだの形の岩」、
いろいろあった。
昼過ぎに水線四門についた。
自 然に囲まれて素敵なところだったけれど、
すっかりさびれていて、
宿泊する予定だったところも含めて、
全てのホテルが営業していなかった。
仕方がないので、
帰りも同じ道を戻っていった。
同じ道のはずなのに、逆から見ると違うように見えるから不思議。
少し急ぎながらも、思わず立ち止まったりしながら景色を存分 に楽しんだ。
今日でこの公園ともお別れと思うとさみしい。本当に飽きることがなくて楽しかった。
そしてどうしても行きたいと思っていた水線四門をこの目で確かめることができたことに満足していた。(映子)